H邸
所在地 | 熊本県熊本市 |
竣工年 | 2003年 |
規模・構造 | RC一部鉄骨造 2階建て |
用途 | 専用住宅(2世帯) |
敷地面積 | 331.48㎥ |
建築面積 | 115.75㎥ |
延床面積 | 152.09㎥ |
撮影 | 大橋富夫 / 久野啓太郎 |
受賞 | 第8回くまもとアートポリス推進賞 |
掲載誌 | 住宅建築 家庭画報 ARTBOX house |
二世帯同居を想定。季節を感じる穏やかな住空間
いろいろな仕掛けで、風、緑、木漏れ日を演出する
この計画では、将来の二世帯同居を視野に入れた規模が求められた。完全な二世帯住居というのではなく、あくまでも同居というスタイルである。まず、将来の世代別の生活を意識し、性格を異にしたゾーンを用意した。
平屋で比較的囲われ、天井高さを抑えた「静」のゾーンと、二層吹き抜けて、大きなガラス面をもつ開放的な「動」のゾーンである。お互いに補いあう二つのゾーンは縁側を介して連結され、プランの中心にはシンボルツリーとしてヒメシャラが植えられた中庭が配置される。2つのゾーンは人の気配が感じられる程度の距離を確保。この距離は、各世代の緩衝帯となるよう計画している。その上で、縁側と中庭は既存庭、屋上テラス、そして空といった外部空間をそれぞれの室内空間へと導き、その境界を曖昧にする。
配置計画においては、特に、敷地南側に隣接する大きな駐車場の今後の用途の変更に注意する必要があった。近隣の様相の変化から予測するに、近い将来、中高層のマンションが建つ可能性を否定できなかったからである。また、建主からは敷地南側の既存の庭を生かしてほしいという要望があった。そこで既存庭を縁側で囲い込むようなL字のレイアウトとし、隣地からのプライバシーを確保しつつ、大きな開口を西側に向けて確保した。熊本は、風土上、西という方角はとても注意を要する。夏の時期、その西日の強烈なことは有名である。
しかしまた、西風はとても心地よくもあるのである。西日対策として開口は折り畳み式の雨戸で全面を覆われた。この雨戸には無双窓をもうけている。その面は完全な遮蔽ではなく、調整可能な隙間から複雑な光が室内に影をおとし、人工的な木漏れ日を演出した。雨戸は開口を保護する機能と同時に、日ざしをやわらげ、かつ、西風は取り込むフィルターとなるよう意図している。空調機器に頼らない快適な空間の構築をこころがけ、常に風の入り口と抜け口を意識して各部を計画しているが、風の流れをコントロールする上で、玄関と居間との間の間仕切りも重要な通り道となっていた。そのため、視線を適度に遮り、空気の流れは妨げないステンレスメッシュという素材を採用している。また、太陽光発電システムや屋上緑化システムを導入、環境に配慮すると同時に仕上げでは木を多用し、そこで生活する人に柔らかなイメージを与えるよう配慮した。
この建物の特徴のひとつとなっている開放的な二層部分の構造は、30cm厚のコンクリート壁と鉄骨で組まれた二階床という混構造で成立しており、構造家の新穂氏による。その一面は二層分のガラス面で覆われる。一方、中庭を挟んで位置する平屋部分は、極力高さを抑えられている。芝生の屋上テラスとそれに続く二階床レベルが同一となるよう計画し、より効果的な空間の広がりを意図している。
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屋上緑化システムを導入。他にも太陽光発電システムを採用するなど環境に配慮している。丸いトップライトがランダムに配置されている。
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西側に向いた開口部には、西日対策、台風対策として全面に雨戸が設けられる。
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ヒメシャラが植えられた中庭を挟んで位置する平屋部分。芝生の屋上テラスとそれに続く二階床レベルが同一となるよう計画し、より効果的な空間の広がりを意図している。
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さまざまな素材を効果的に使用している。
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仕上げでは木を多用し、そこで生活する人に柔らかなイメージを与えるように配慮している。
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日ざしをやわらげると同時に西風を取り込むフィルターとしての雨戸。
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無双窓を仕込んだ折りたたみ式の雨戸。
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南側には広い駐車場が広がる。建物をL型のプランとし、開口部は主に西側にむけてとられている。
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RC造の外壁の中に鉄骨造で薄く作られた二階の床。1階と2階の天井高さを変えることで、空間にメリハリを与えている。
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雨戸のスリットは完全な遮蔽ではなく、人工的な木漏れ日を演出。調整可能な隙間から差し込む光が室内に複雑な影をおとす。
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奥まった場所に玄関を設け、アプローチの長さを長く取っている。
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紅葉が彩りを添えるエントランス。
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玄関から中庭を見通す。
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天井いっぱいの書棚。
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和室。コンクリート打放しや丸いトップライトといった現代的な要素もとり入れている。
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視線を適度に遮り、風の流れは妨げないステンレスメッシュという素材を採用。
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新緑の季節には、木で仕上げられた壁面にヒメシャラの青葉が影を落とす。
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紅葉が彩りを添えるエントランス。
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季節の変化が楽しめる家づくりを心がける。
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コンクリートと木の素材の対比。