この計画は35坪程度の木造二階建ての新築で、要望としてご主人の趣味でもある名作家具のコレクションを生かす空間をもとめらられた。
外観の特徴として、3つの高さの違うボリュームをデザイン的にずらしながら組み合わせ立体を構成。ずらすことで生まれる余白の空間を有効に活用している。ボリュームの高さは一番面の大きい東面で使用している既製品のサイディングのサイズを考慮し無駄のないよう、かつ余分な継ぎ目がでないよう決められている。そのうえで、一番高いボリュームはその天井空間をいかしたロフトがもうけられ、一番高さの低いボリュームはバルコニーの手摺の高さを外壁と一体化することでみえがかり上キューブとしている。機能はデザインに反映されている。白を基調とした建物とし、正面のボリュームの1面だけを羽目板で仕上げアクセントとしている。
内部空間は、タペストリフィルムを張ったガラスで淡く仕切られた玄関ホールを抜けると、家具のショールームのように随所で吹抜けがもうけられ、ずらしたキューブの効果で複雑な形のリビングダイニング空間があらわれる。
1階の床材はミッドセンチュリーの名作が多いこともあるので色彩の相性を考え、濃いウォルナットの床材をセレクト。本来なら家具との相性も考え無垢床材を採用したいところだが、空調計画として床暖房を採用しているためどうしても反りや割れなどの問題が生じてしまう。床暖房対応の無垢材もあるが、かなりコストがかかってしまい現実的には難しい。そこで厚張りの合板フローリング材をセレクトしている。表面の仕上げ材に2mmの無垢板が貼られており、限りなく無垢の風合いを保ちながら繊維方向を変えた合板は狂いが少なく床暖房にも対応できるという優れものだ。多少傷がついたり磨いたりしても同じ材があらわれるのも無垢材と同じ使い心地だ。また、仕上げ材にはワンポイントとして黒く塗装したスチールも随所で使用している。階段は回り階段をスチールのササラと板材の踏み板でスケルトンなディテールとし軽やかに構成している。造り付け家具は仕上げをタモ、収納内部を白いポリとし、それを化粧で積層させた材で構成。ミッドセンチュリーの雰囲気にあわせてデザインしている。照明計画はバブルランプを基準に考えられ、間接照明や足下照明などを多用。明るすぎず、均一にならないよう注意をはらいながら印象的な照明効果をこころがけた。
浴室はモルタルで仕上げられ、ヘッドシャワーのついたシャワーバーが設置される。仕切りはガラスでつくられ清潔でクリアな印象の洗面脱衣室としている。