敷地は交通量の多い道路に面するが、南側は公園で保存樹木となっている大きなクスノキをのぞむことができる。コンクリート3階建ての建物は道路側が必然的に閉鎖的になってしまうため、街なみにあたえる印象を考え、上品で繊細な表情となるよう意識している。ファサードはコンクリート打ち放し仕上げと石でデザイン。石材はほんの少しピンクがかった白い天然大理石を選び、表面を凹凸のある仕上げとした材を比較的小さめの単位で乱尺の割付をして貼っている。
エントランスは壁をベージュ色の石材(ライムストーン)、床を白い大理石(タソスホワイト)で仕上げ、正面には間接照明を仕込んだ小さなアルコーブをもうけ華美になりすぎず、シンプルながら上品な印象になるよう注意した。
メインの居室の南側にはバルコニーが設けられ、全面を大きな開口部としている。暗くならないよう光を透過するタペストリフィルムを貼ったガラス手摺で視線をカット、軒天井は空にむいて斜め上方に大きく視界を開いている。リビングからは公園のクスノキと空だけが見えるように意図している。床材は借景の緑が映えるように濃い色味で少し荒々しい印象の無垢のアフゼリアを採用。建具は、色調は似ているが表情がもう少し柔らかなウォルナット材を使用、造り付け家具は部屋全体の色バランスを考え、白を基調としてコーディネートしている。アイランドスタイルのキッチンはピアノ塗装で家具的にデザイン。大きな空間のワンポイントとなるようにオーダーの濃いグレー色としている。